徹郎は僕と親しい友人だ。
がっしりした体つきで何事も率先してこなす性格は頼りがいがある。 「お前マジで言ってんのか。嘘じゃないな」 「誰が嘘つくか」 僕はぶっきらぼうを装って答える。徹郎は真剣な顔だ。 こいつ、こんなに迷信深かったのか。 「見たのか…。お前は食われるんじゃないぞ」 「よしてくれよ」 無感動と言えるくらいクールな徹郎が、与太話と馬鹿に出来るような話題をまじめに取り合っている。 様子が少しおかしいことに僕は気づいた。 お前、と問いただす前に、日焼けした男は言った。 「沢田な、あいつと仲よかったんだよ、俺。話も色々聞いてる」 「ああ……」 なんとなく予想がついて、僕は口をつぐんだ。鈍感だったのだ。 徹郎と沢田は付き合うか、それに近い関係だったに違いない。 照れ屋で奥手な徹郎が、親友の僕にも言えずにいたことは、容易に想像できた。 >>次へ
by sillin
| 2005-06-23 18:53
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