放課後>上の階へ>浜辺へ

途中でアイスを食いたいと抜かした加奈に付き合って、回り道をしていると夕方になった。
浜辺の太陽は、夕日に少し遠い明るさで波間をきらめかせている。

「ほら、だーれもいない」

浜辺に下りて加奈が勝ち誇っている。
僕は適当にうなずいて、水平線を眺めながら歩いた。
来てよかったのかもしれない。誰もいない浜辺は、僕の見たものを幻だと実感させてくれる気がする。

「あれぇー?でも変だね」

「なにがだよ」

変、と言う単語を聞くだけで、今の僕は心拍数があがる。
加奈は両手を広げて、僕の方を向いた。

「だって、夕方ってもっと人いんじゃん?犬の散歩とかさー」

そうだ。誰も居ない。僕ら二人しか、この広い浜に。
なんだ?
音が――波音が、遠くに聞こえる。
加奈の声がぶつぶつと途切れ、聞こえなくなる。

「誰かを探しているの?」

反射的に後ろを振り向いた。
赤い鳥居を背にして、今朝見た女子生徒が立っていた。
僕は声も出ない。
こんなところに鳥居なんてあっただろうか、と無意味に思った。

「探していたのは、私かしら」

ふっと笑った。歳のわりには大人びた笑みだ。
僕とあまり違わない年齢だろう。腰までありそうな長い髪と、ずば抜けて美しい顔意外、一般の生徒となんら変わらない。

「君は誰なんだ」

「私は『おに』」

その言葉を聞いた瞬間、滝のように汗が流れ出した。


>>さらに質問する

>>逃げ出す
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by sillin | 2005-06-23 23:01
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