「獣に食われたような死体か……」
麦茶片手、タバコ片手に叔母はうなった。 家に戻って、沢田の死についてもう一度詳しく話して整理することにしたのだ。 両親は仕事で忙しく、家はいつもがらんとしている。 よく遊びに来て僕の相手をしてくれた叔母は、僕にとって姉であり、もう一人の母親のようなものだ。 「鬼を見たら食われるって言う噂どおりなんだよ」 「なにか別の犯人がいる。私は沢田さんと仲のよかった徹郎君が怪しくみえるぞ」 「なんでそういい切れるのさ」 「言い切っちゃいない。いいか、たっくん」 叔母はタバコを咥えて身を乗り出した。 「私だから平然とお前の相手をしているがな、この事件はこの世のものじゃない存在が関わっている。普通じゃないんだ。普通は信用するべき人間も信用するな」 そうだ。叔母が変人であることを失念していた。 僕はこの世ならぬものを見ている。 「なら、叔母さんも信用しちゃいけないってこと?」 「……参ったな。たっくん、私だけは特別だ。親も友達も信用できなくなったとしても、私だけは信じろ。いいな」 そう言って笑った。 僕は急に、叔母が僕の初恋の人だったことを思い出して赤くなった。 「さて、話を戻すと。私は徹郎君から情報をあたるのがとりあえず先決だと思う。理由はいろいろあるが、たっくんに先入観を持たせちゃいけないからな。今は言えないぞ」 「わかったよ。明日徹郎と会って相談する」 「うん。それがいい。だが、友達でも信用したりするなよ」 「わかってるって」 言いながらも僕は徹郎を信じていた。いや、信じるとかの問題ではなくて、いつも親身になってくれる友人のどこに疑う要素があるというのだ。 >>翌日、徹郎と…
by sillin
| 2005-07-01 11:51
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