本当に一瞬意識が途切れたらしい。
倒れかけた僕は、なにかに抱きとめられていた。 「しっかりして」 目の前に少女の顔があった。この世のものでないから、これほど綺麗なんだろうか。 そういう考えしか浮かばないほど、少女の顔立ちは美しい。 しばらくしてようやく、僕は少女に抱きとめられたことを悟った。 「あ!ご、ごめん」 しどろもどろで言いながら、自分の足で立ち上がる。まだ少しふらついて、僕は頭を振った。 ごめんも何もないものだ。目の前に急に沸いて出られて、失神でもしない方がおかしい。 「なにか勘違いしていないかしら」 少女は長い睫を伏せ気味にして、苦笑している。 「え?」 「私は『おに』そして『かみ』」 僕は意味がわからなくて、ただ立っていた。 「ねえ、あなたには……いいえ、またここに来て」 「あ……」 少女の姿が、急激に薄くなっていく。 「もう一度ここへ来たとき、あなたには……」 「琢馬君っ!!」 耳元で大声がして、僕は反射的に飛び上がっていた。 加奈が肩で息をしながら、僕を見つめていた。 「加奈、もしかしてずっと呼んでた?」 「うん。それより、居たの。居たんだね!?」 「え、うん。信じる気になった?」 「だって、琢馬君、ものすごい変な姿勢で空中浮遊したんだもん!」 気を失ったときだ。加奈には僕がずっと見えていたのだ。 すごいすごいを連発する加奈は適当にあしらって、僕は考えていた。 どうもあの少女、僕を取って食うような鬼ではないのかもしれない。 なにかを訴えたがっていた。 沢田が死んだのには、なにか別の原因があったんじゃないだろうか。 >>次の日…
by sillin
| 2005-06-27 20:16
|
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
最新のコメント
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||