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叔母もその少女――霞を見ている。
いつしか僕は、真剣な表情で桐島先生の顔を凝視していた。

「私が相談を受けたのは、もう当時の事件が終盤に差し掛かった頃だった。如月さんは親友を守るため、必死で戦ったそうだよ。何とかは、聞かなかったがね。それはおそらく、この世のものじゃない」

淡々と英語を教え、生徒の悩みをよく聞く――それで評判の老教師から、こんな話を聞けるとは思わなかった。桐島先生は苦渋の表情だった。

「結局私はなんの役にも立てず、如月さんは破れ、親友は霞さんと同じように消えてしまった。十年前、失踪したのは――岩木絵里さんだ」

僕は徹郎を見る。徹郎はじっとしている。

「もっと早くに、君に言うべきだったのかもしれない。徹郎君、すまなかった」

「いいですよ。俺もこんなことがなけりゃ、信じるわけないし」

頭を下げる桐島先生へ、徹郎は平坦な声で言った。そこにどんな感情が含まれているのか、僕にもわからない。

徹郎と僕に、見えないところでこんな関係があったとは思わなかった。
鬼に関して確信的な情報を得られたのは大きな収穫だが、桐島先生は沢田についてなにも知らないようだった。
ただ、霞は人を食うような存在ではない、と断言する。

僕らは礼を言って資料庫を出ると、今後どうするかを話し合った。


>>沢田の線から当たる

>>十年前の事件から当たる

>>もう一度浜辺へ行く
by sillin | 2005-07-02 01:07
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