もう一度ここへ、とあの少女は言っていた。
波打ち際にも松林にも、黒髪をなびかせるその姿はない。 僕と加奈は犬の散歩やジョギングをする人たちに混じり、ぶらぶらと浜辺を歩いた。 「居ないね」 珍しくずっと黙っていた加奈がぽつりと言った。 僕はうなずく。 夕日が傾いて、浜も、波も、加奈の顔も、全部が赤く染まりつつあった。 「居るはずのないものは、居ない方がいいのかもしれないネ」 僕はもう一度うなずいた。 なんだか、もう二度とあの少女に会うことはない気がした。 ――加奈・大直日綿津海神・エンド >>スタートへ
by sillin
| 2005-07-03 09:57
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