「……ありがとう。ねぇ、琢馬君。あなたも如月さんのように、親友を助けるため命をかけられる?」
叔母の名前が出た。 叔母もこうやって戦ったんだ。 それがいかに偉大な決意だったか、同じ境遇へ身をおいて、初めて実感できた。 わかったことはもうひとつあった。 「わからない。でもそうしたいと思ってる。霞さん、徹郎が危ないんだね」 霞はうなずく。黒髪がさざめく。 「敵の協力者は、徹郎君なの。あの子の因果律はもうどうしようもないほど狂って――私が直接手を下すか、敵を封じる方法でしか直せない。そのために琢馬君の協力が欲しいわ」 「やるよ。僕に何ができるんだい」 「敵を封じるのは不可能かもしれない。せめて徹郎君だけでも助けましょう。ついてきて」 霞は歩き出し、浜をあがった。その姿は松林へ向かう。 僕は古ぼけた制服姿を追って、松林へ入った。 赤い鳥居が立っている。現実世界に、もちろんこんなものはない。 「鳥居は世界の境界。通り居るが訛って鳥居なのよ。さあ、門を通って」 霞が先に鳥居をくぐる。掻き消えるようにその姿が消えても、僕には何の驚きもない。 僕もその後へ続いた。 >>次へ
by sillin
| 2005-07-03 21:39
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